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ディック・フランシス 競馬ミステリー   

 意外な事実?が発覚。ディック・フランシスの小説は、全て、妻であるメアリー夫人によって書かれていた疑いがあることが、1999年10月28日発売のグラハム・ロード著「ディック・フランシス・ア・レーシングライフ」によって明らかにされた。本の発刊に先立ち、英紙「レーシングポスト」は10月19日付でこのニュースを伝えた。

 翌2000年9月、メアリー夫人が逝去、80歳のディック・フランシスは、最新作『Shattered』(日本語訳『勝利』 2001年7月発売)」を最後に引退する意向を明らかにした。

 ディック・フランシスは「作品を書かせてくれたのは妻だった。もう手紙などのほかには何も書かないだろう。私の作品のほとんどは彼女の仕事だった」と語った。実際、最新の伝記によると、彼女は全作品の調査から構成まで協力した隠れた協力者だったが、「共著者」になることを固辞していた、と記されている。

 だからと言って、これらの作品が最高の競馬ミステリー小説のシリーズではないかと言えば、答は明らかに「ノー」である。

 ・・・・・・・・・

 その後、沈黙を守っていたディック・フランシスは86歳になって40作目『Under Orders』(日本語訳『再起』 2006年12月発売)」を発表した。息子・フェリックスを協力者としてのものだが、まさに不屈の精神でのカムバックである。そして、読者にとっては、大きなる喜びである。主人公は、あのシッド・ハレー。 

 

※この究極のミステリーを詳しくお知りになりたい方には「書斎の競馬学『D・フランシスの究極のミステリー』(著者:山本一生 平凡社新書 2008年12月出版)」がお薦めです。

  

ディック・フランシスの略歴

1920年  英国ウェールズ ペンブロークシャーの農場で生まれる

1935年  父が経営する猟馬専門厩舎のデモンストレーター兼セールスマン

1940年  英国空軍パイロット

1946年  アマチュア障害騎手

1948年  プロ騎手となりエリザベス皇太后のお抱え騎手

1953・54年  全英チャンピョン・ジョッキー

1956年  グランド・ナショナルで不運の名馬デヴォン・ロックに騎乗、ゴール前50ヤードで力尽きる

1957年  騎手引退。サンデー・イクスプレス紙で競馬欄を担当。 自叙伝「女王陛下の騎手(Sport of Queens)」を発表

1962年  競馬ミステリー「本命(Dead Cert)」を発表 

1970年  アメリカ探偵作家クラブ賞 エドガー賞長編賞「罰金(Forfeit)」 受賞

英国推理作家協会会長 受賞

1973年  英国推理作家協会会長

1979年  英国推理作家協会賞 ゴールデンダガー賞 「利腕(Whip Hand)」 受賞

1981年  アメリカ探偵作家クラブ賞 エドガー賞長編賞「利腕(Whip Hand)」  受賞

1989年  英国推理作家協会賞 ダイヤモンドダガー賞 受賞

1996年  アメリカ探偵作家クラブ賞 エドガー賞長編賞 「敵手(Come to Grief)」 受賞

アメリカ探偵作家クラブ賞 巨匠賞 受賞

2000年    妻であり執筆の協力者であったメアリー・フランシス死去

2006年    息子フェリックス・フランシスを協力者として「再起(Under Orders)」を発表

2010年  カリブ海の英領ケイマン諸島の自宅で死去。89歳

 

   

ディック・フランシス 長編競馬ミステリー 全44作
本命 DEAD CERT (1962年発表 日本語訳 第3弾)
名馬アドミラルがレース途中で障害の飛越に失敗し、騎乗していたビルが死んだ。その飛越失敗に疑問を抱いたビルの友人アランが障害を調べてみると、果たしてそこには妨害の跡があった。一体誰が何のために?

「この馬は踏む相手を選ぶんだ」

度胸 NERVE (日本語訳 第4弾)
新鋭騎手ロバートのもとに、一流馬に騎乗するチャンスがめぐってきた。この大役を見事果たしたロバートの前途は明るいように思われたが、その行く手には悪意に満ちた噂と彼を陥れるための罠が用意されていた・・・・・・。

「私の念頭にあることはただひとつ、レースです・・・・競う・・・・そして、できれば勝ちたい」

興奮 FOR KICKS (日本語訳 第1弾 1967年出版) 【英国推理作家協会シルヴァーダガー賞】
豪州の牧場主ダニエル・ロークのもとに奇妙な依頼が舞い込む。厩務員に扮して英国の競馬界へ潜入し、近頃高まる薬物疑惑を調査して欲しいというのだ。平凡な日々に見切りをつけ、ロークは新しい世界へと乗り出した。

「まずいな・・・・注意しないと評判がよくなってしまう」 

「私が厩舎で働くのは、それだけしか知らないからです」

石川喬司(馬家先生)氏が選んだ競馬ファンのための◎○△(優駿1989年1~2月号)

◎「興奮」   ○「本命」    ▲「血統」

マスターズ出場が決まった石川遼が2009年1月28日放送「みのもんたの朝ズバッ!」に登校前に生出演。その通学バッグに入っていたのは「お父さんに勧められて読んでいる『興奮』」。

大穴 ODDS AGAINST (日本語訳 第2弾)
障害レースで左手を負傷し、栄光から引きずりおろされた名騎手シッド・ハレー。引退後探偵社の調査員となった彼に持ち込まれた競馬場に関わる事件が、屍同然の彼に火をつけた。

「馬というのは本当にデリケートな動物なのだ。ハレーのレースのは騎手に身体だ。大障害の騎手の体だ」

飛越 FLYING FINISH (日本語訳 第5弾)
ヘンリーは伯爵であるが、自ら望んで競走馬空輸の仕事に就いた。だが、前任者二人が謎の失踪を遂げ、そしてついには友人までが失踪するに及び、調査に乗り出すことを決意する。その事件の鍵はイタリアにあるのか・・・・。

「おめえにゃ、それだけの度胸がねぇ」

「おまえの考え違いだ、ビリィ。最初から私をみあまっている」

血統 BLOOD SPORT (日本語訳 第6弾)
諜報部員ジーンはアメリカに渡った。行方不明になった名馬を捜索するためだ。同様の事件が他に二件起きていたが、動機は不明。ついには馬主の生命までが狙われる。

「馬というド畜生にいちばん基本的なことは、男の心を奪ってばか者にすることよ」

罰金 FORFEIT (日本語訳 第7弾) 【米国探偵作家クラブ最優秀長編賞】
「時分の魂を売るな」と謎の言葉を残しビルから飛び降りた競馬記者。同僚の記者タイローンは彼が不正に絡んでたと考え、追求を始めた。だが、全身麻痺の妻を抱えるタイローンに敵は卑劣な罠を用意していた。

「他の人にやらせれば」

「その考えが昔から暴挙を許しているんだ」

査問 ENQUIRY (日本語訳 第8弾)
きのう、私は騎手免許を失った―――八百長の濡れ衣を着せらた騎手ケリイ。捏造された証拠。査問会の不審な裁定。これは罠なのだ。絶望の中、彼の執念の調査が始まる.

「どうして、ベットから立ちあがって、紳士らしく、気魂を示さないのだ?」

混戦 RAT RACE (日本語訳 第9弾)
パイロットのマットは、英国一の人気騎手を乗せた飛行機を操縦していた。乗客の中には、何か企んでいそうな人物も混じっている。乱気流の中を飛びながら、マットは何物かが期待に細工したことに気づく・・・・。

「すべては、つねに機長の責任です。誰が何をしようと」

骨折 BONECRACK (日本語訳 第10弾)
本命馬にこちらが指定する騎手を乗せろ。さもなくば厩舎の馬の脚を折る―――それが、高名な調教師の息子、ニールを襲った脅迫だった。この屈辱から逃れるすべはあるのか?

「絶対に自惚れてはいけない。人の批評に動揺してはならない・・・・競馬場にいる間は、つねに自制することだ」

重賞 HIGH STAKES  (日本語訳 第14弾)
スコットは調教師のジョディに大金を騙し取られていたことに気づいて、彼を解雇した。逆恨みしたジョディは、名馬エナジャイズを駄馬とすりかえてしまった。愛馬を取り戻そうとするスコットの行く手には罠が・・・・。

「これが終わったら、人生が単調になったような気がするでしょうね」

佐藤正人氏の一言(私の競馬雑記帳(週間競馬報知)より抜粋)

題名のHigh Stakesを重賞としているが、この本の内容から考えても、これでは全然意味をなさない。・・・・・High Stakesは英和辞典などを調べれば、play for high Stakes(大ばくちを打つ)などの用例が見つかる。こういった意味から、内容と合わせて適当な日本語の題名をつければよいわけである。さらに、ロジャー・モーティマーの「平地競馬のエンサイクロペディア」などを調べてみれば、1942年生まれの、32勝したハイ・ステークスという、英国の競馬史を飾るタフな馬がいたことが分かる。ディック・フランシスは、この小説の題名をつける時に、もちろんこの馬のことを頭に浮かべていたに違いない。・・・・・

煙幕 SMOKESCREEN (日本語訳 第11弾)
余命僅かな叔母のネリッサの頼みにより、人気俳優のエドワードは南アフリカへと飛んだ。彼女が甥に遺そうとしている競走馬が原因不明の成績不振に陥っており、資産価値が急落しつつあったためだ。だが、南アフリカの地では、予想外の危機が彼を待ち受けていた・・・・

「いつまでも自分自身から逃避することはできないのだよ、きみ」

佐藤正人氏の一言(競馬研究ノートより抜粋)

ディック・フランシスの翻訳に関しては、今まで何回も指摘してきたが、ここでまた改めて書くのも、ちょっと気がひけるが、私の専門である競馬に関することだから、どうしても言いたいのである。正しい、すっきりとした翻訳で、ディック・フランシスを読みたいのである。・・・・・気になる点をあげると、以下のようなことである。

1.やたらに主語を省略しているので、誰が言っているのだか、分からないことが多い。

2.男性の会話の訳し方がまずい。・・・・・会話をする相手の人が、目上の人でも、そうでない人でも訳し方に区別がない。

3.競馬の専門用語に、誤訳または不適当な訳が多い。・・・・・サラブレッドでもっとも多い毛色である鹿毛の馬がディック・フランシスの小説には出てこない。これは訳者はBAY(鹿毛)を栗毛と訳している・・・・・

・・・・・以上、いろいろ書いたが、これらは、この小説の面白さとは関係ない。

暴走 SLAY RIDE (日本語訳 第12弾)
ジョッキークラブの調査主任デビットは売上金の横領事件を調査するためにノルウェーに飛ぶ。現地に着いて間もなく、彼は事故を装った何者かにより、極寒の海中に放り出される。陰謀の存在を確信したデビットは、行方不明の英国人騎手を捜索するが・・・・

「私は三十二だ。アレキサンダー大王はその年頃にはギリシャからインドあたりまで征服していたよ」

佐藤正人氏の一言(私の競馬雑記帳(週間競馬報知)より抜粋)

競馬が舞台だと思って読んだ人は絶望するだろう。競馬は、ほんの刺し身のつま程度につかわれているにすぎない。だが、面白いことはたしかだ。競馬のことがあまり出てこないだけにこの翻訳は今までのうちで、いちばん良い出来であると思う。・・・・・bookmakerも賭け屋と訳すのは、どんなものだろうか。ブックメーカーはそのままでよいと思うが・・・・・「キャンターで走らせたって勝てたはずだ」の原文は、he shauld've won at canterで、訳文はあまり直訳すぎる。「楽勝したにちがいない」ということだ。・・・・・Sand trackを「砂敷き走路」などと訳しているが、これも訳者があまり競馬のことを知らないからである。

転倒 KNOCK DOWN (日本語訳 第13弾)
信用の厚い競走馬仲介業者であるジョウナを、何者かが陥れようとしていた。競り落としたばかりの馬を強奪されたのを始め、さまざまに嫌がらせをうけたジョウナは犯人を捜すが、姿の見えぬ敵は厩舎に火を放ち・・・

「わたしは騎手時代、待機戦術でレースに勝った事が何回かある。辛抱は長年の友人であった」

佐藤正人氏の一言(私の競馬雑記帳(週間競馬報知)より抜粋)

私は、とても面白く読むことができた。・・・・・菊池光氏の訳文は、流ちょうだが、競馬のことはあまり詳しくないようで・・・・・「運搬車」とあるが、ふつう「馬運車」という。・・・・・「十歳になるのに、まだ種付けをうけたことのない癖の悪い断郊競走馬」の原文は、it was a crib-biting point-to-pointer still a maiden at tenである。だから正しくは、次のようになる。「明け十一歳になるのに、まだ未勝利のさく癖を持った断郊競走馬」・・・・・馬の年齢を訳者は、あるところでは、日本式に明け年齢にしている。「明け六歳の障害馬」の原文は、A five-year-old hurdlerである。統一してもらわないと困る。・・・・・この本からBAYはちゃんと鹿毛と訳してある。私が、しつこく何回も書いたせいかもしれない。

追込 IN THE FRAME (日本語訳 第15弾)
馬を専門に描いている画家チャールズは、英国でおきた強盗殺人事件と放火事件の間に、豪州で購入されたマニングスの名画の消失という共通点を見出した。チャールズは真相を追うべく豪州へと旅立つが・・・・

「危険なことをしていんしと、幸福ではないのね」

障害 RISK (日本語訳 第16弾)
公認会計士でアマチュア騎手のブリトンは、障害レースで優勝を飾った。しかしその直後、彼は何者かに誘拐された。やがて気づいた時は暗闇の中。どこにいるのかわからぬまま、彼は脱出を決意する・・・・

「なんの得にもならないのに、障害レースで危険を冒すような人、それほど身分証明や雇用の安定、収入なんかにこだわるはずがないわよ,」

試走 TRAIAL RUN (日本語訳 第17弾)
「アリョシャ」という言葉を残して急死した騎手。モスクワ五輪優勝を目指す英国貴族にも何者かが忍び寄る。スキャンダルを恐れるお王室は元騎手ランドルに調査を依頼し、彼は単身モスクワへと向かった・・・・

「あんたは、馬を救った。協力せよ、とニコライ・アレクサンドロヴィッチがいった。ぼく協力する」

利腕 WHIP HAND (日本語訳 第18弾) 【米国探偵作家クラブ最優秀長編賞】【英国推理作家協会シルヴァーダガー賞】
圧倒的な強さをみせる本命馬が、次々とレースに惨敗し、原因不明の病に冒されるという不幸に見舞われた厩舎。その調査にのりだしたシッドだったが、それを快く思わない者によって脅迫を受けてしまう・・・・

「この世に何かないのか。お前が恐れるようなものは?」

反射 REFLEX (日本語訳 第19弾)
事故死した競馬写真家ジョージの家に、二日続けて泥棒が侵入した。アマチュア写真家でもある騎手のノアは、そこで失敗作らしきフィルムを手に入れるのだが、そこには意外な秘密が隠されていた・・・・

「不成功を祈ってるよ」

配当 TWICE SHY (日本語訳 第20弾)
物理教師ジョナサンにコンピュータプログラムのテープを渡した後、その友人はボートの爆発事故で死亡した。そして、何者かがジョナサンの命を狙い始める。テープに入っていた勝ち馬予想システムに関連があるのか?

「おれはお前たち二人とも撃つ、嘘だと想ったら大間違いだ。おれは射撃の名手だ」

「ほらを吹くべき時があったら、今がそれだ」

名門 BANKER (日本語訳 第21弾)
銀行の青年重役ティムは、とある生産牧場に対し、優秀な馬を種牡馬として買い付ける融資を承諾した。が、その馬から立て続けに奇形の子馬が生まれ始めて・・・・

「どうやら、わたしは、自分が死ぬという可能性はありえない、と考えているようです」

奪回 THE DANGER (日本語訳 第22弾)
腕利きの女性騎手が誘拐され、誘拐対策会社のスタッフ、アンドルーは現地へと飛んだ。犯人との交渉の結果、ようやく人質は開放されたが、今度は馬主の息子が誘拐された・・・・

「それは病気、あるいは死のようなものだ・・・・傷痕を覆う組織を作り出すことがひつようだ」

証拠 PROOF (日本語訳 第23弾)
ワイン商トニーは、偽ラベルが貼られたワインが大量に出回っていることを知った。その知識を買われ、警察に協力する彼だったが、やがて恐怖の淵に叩きこまれることになる。

「恐ろしい状況の下での恐怖は正常です。恐怖を感じないのは異常です」

侵入 BREAK IN  (日本語訳 第24弾)
障害騎手キットの妹ホリーは、長年にわたって敵対するアラデック家の息子とともに厩舎を営んでいた。そんなある日、三文新聞に「(二人は)破産寸前である」という中傷記事が掲載された。キットはその張本人を探そうとするのだが・・・・

「おれはもう少しできみを殺すところだった。」

連闘 BOLT (日本語訳 第25弾)
夫が共同経営者に脅迫されているので、どうか助けて欲しい。馬主のカシリア王女から依頼を受けた障害騎手キットは、彼女たちを救うことを決意する。しかし「敵」の魔手はそんな彼にも迫ってくる・・・・

「あなたが人の心を読めることを、私、時折忘れるわ」

黄金 HOT MONEY (日本語訳 第26弾)
父の五番目の妻が殺された。そして今、父の命が狙われている。離婚再婚を繰り返す大富豪の息子イアンは、父に呼ばれ、その身を守ることになった。犯人は何者なのか?

「アマチュアは、誰よりも速く走りますよ」

横断 THE EDGE (日本語訳 第27弾)
名馬、馬主、競馬ファンを運びながらカナダ各地の競馬場をめぐる「大陸横断競馬列車」。英国ジョッキークラブ保険部員トーは、黒い噂の絶えない馬主フィルマーを追い、ミステリー劇を演じる俳優に扮してこの列車に乗り込むのだが・・・・

「とにかく、相棒、何者だか知らないが、きみと知り合って大いに参考になったよ」

直線 STRAIGHT (日本語訳 第28弾)
宝石の輸入販売をしていた男が死亡し、その事業と財産は弟の騎手デリックに引き継がれることになった。しかし兄のダイヤが消えていることに気付いたデリックは、まもなく何者かに命を狙われてしまう・・・・

「殺人が成功するのは、何も動機がないように見える場合だけだ」

標的 LONGSHOT (日本語訳 第29弾)
高名な調教師の伝記執筆、それが作家ケンドルの受けた依頼だった。だが調教師は倣岸な男。しかし厩舎に赴いて早々、複雑な人間関係の中、厩務員の殺人事件が発生する。

「絶望するのは容易だ。サヴァイヴァルは容易ではない」

帰還 COMEBACK (日本語訳 第30弾)
外交官のダーウィンは、マイアミで老夫婦と知り合い、娘を訪ねるという彼らに同行する。娘の婚約者である獣医のケンは、手術を担当した競走馬が不審な死を遂げ悩んでいた。ダーウィンは彼を助けるべく尽力するが・・・・

「もよもよ私は邪悪さよりも善良さに興味を感じるのだが、それが世間一般の見方でないのは承知している」

密輸 DRIVING FORCE (日本語訳 第31弾)
元騎手のフレディは、現在馬の運送会社を営んでいる。ある日、従業員が乗せたヒッチハイカーが、馬運車の中で死ぬという事件が起きた。その夜、何者かが会社に侵入した。なにやら車に細工をしているらしい・・・・

「人のはそれぞれ信仰の対象があるのだろうと思う。私の場合は大きな馬と大きな障害だ」

佐藤正人氏の一言(競馬研究ノートより抜粋)

「・・・・・二十一歳と記してあるが、人間でいえば九十くらいに相当する」・・・・・私はディック・フランシスに対して、「フランシスよ、お前もか」と言いたい。人間の年齢と馬の年齢を比較する時には、ほとんど馬の年齢を四倍か五倍して、相当する人間の年齢としているが、こういったやり方は誤りである。簡単な例をあげると、馬の二十歳といえば、丈夫な種牡馬なら四十頭や五十頭に種付けできるが、八十歳の人間は、とてもそんな能力は持っていないであろう。・・・・・馬の一桁の年齢では四倍、十代では三倍、二十代では二・五倍、三十代では二倍というようにすればよいと思う。

決着 DECIDER (日本語訳 第32弾)
ストラットン一族は、競馬場を売却するか否かを巡って、互いに意見が対立していた。彼らと浅からぬ因縁のあるリーもこの騒動に巻き込まれるが、そのために自身と子供までが危険にさらされていく・・・・

「競馬はイギリスでは三百年よりはるかに長く続いています。スキャンダル、詐欺、あらゆる種類の偶発的な災厄を生き抜いてきているのです。馬は美しい動物だし、賭け事は一種の中毒です」

告解 WILD HORSES (日本語訳 第33弾)
瀕死の老競馬ジャーナリストから、過去の殺人を告白された映画監督トマス。そんな彼が新作に選んだのは26年前に厩舎で起きた変死事件だった。しかし真相をめぐる脚本家との対立が絶えず、やがて差出人不明の脅迫状が・・・・

「彼は世間知らずなのです。だからといって下手な作家ということにはならない」

敵手 COME TO BRIEF (日本語訳 第34弾)
テレビの人気司会者エリス。馬の脚を切断してまわる非道な犯罪者として彼を告白したシッドは、世間の非難を一斉に浴びた。果たして本当に彼が犯人なのか?

「人々の中には、自分の子供同様に自分の馬を愛する人たちがいるのだ」

不屈 TO THE HILT (日本語訳 第35弾)
スコットランドの山中に隠棲していた青年画家が、病床の義父に代わってビール工房の切り盛りを任せられることに。しかし経理係りが大金を持ち逃げしたせいで会社は倒産寸前。頼みの綱は会社の主催する競馬大会だが・・・・

「多少頭がおかしいほうがいいのです。例えば宝物などを隠す場合」

騎乗 10-LB PENALTY (日本語訳 第36弾)
事実無根の難癖をつけられて厩舎を追い出された17歳のアマチュア騎手ベネディクトは、父親の選挙活動を支援している。ある晩、何者かが二人を銃撃した。辛くも難を逃れた彼らは、続いて火災にも見舞われる・・・・

「ぼくは騎手になったほうがいい」

出走 FIELD OF 13 (日本語訳 第37弾)
厩舎で働くモサには上流社会に嫁いだ、女手ひとつで育て上げた一人娘ジョウニイがいた。しかし、母娘の二人は断絶、その陰には思いも寄らぬ哀しい事実が隠されていた。
烈風 SECOND WIND (日本語訳 第38弾)
気象予報士ペリイは同僚とともにカリブ海でハリケーンの目を横断する飛行に出た。しかし、その帰途、強風に揉まれ飛行機は海上に不時着、無人島に辿り着いた。そこからペリイは一連の出来事に遭遇するが、そこには意外な黒幕がいた。
勝利 SHATTERED (日本語訳 第39弾)
友人の騎手マーティンがレース中の事故で死亡し、ローガンの人生は一変した。マーティンが死の直前、一本のビデオテープをローガンに託そうとしていた。そのテープには莫大な価値があると言い残して・・・・
再起 UNDER ORDERS (日本語訳 第40弾)
元騎手の調査員シッド・ハレーは建設会社を経営する上院議員から「持ち馬が八百長に利用されている疑いがある」と言われる。ハレーが調査を開始すると、上院議員が「八百長の犯人ではないか」と疑う調教師と騎手が次々に殺されていく・・・・

息子フェリックス・フランシスを協力者として発表

祝宴 DEAD HEAT (日本語訳 第41弾)
史上最年少でミシュランのひとつ星を獲得した若きシェフ、マックス・モアトン。だが料理を担当した2000ギニー競走の前夜祭で食中毒が発生、翌日にはパーティ会場で爆弾テロが起きる。食中毒と爆弾事件との間に何か繋がりがあると直感したマックスは汚名返上のため調査を開始する。

本作品より、息子フェリックス・フランシスとの共作となる

審判 SILKS (日本語訳 第42弾)
騎手のスコット・バーロウが何者かに殺される。そして、直前にスコットと口論をしていたライバル騎手のスティーヴ・ミッチェルが容疑者として逮捕され、騎手仲間のメイスンが弁護を依頼される。しかし、その直後から「弁護を引き受けて、わざと負けろ」という脅迫を受ける・・・・
拮抗 EVEN MONEY (日本語訳 第43弾)
亡き祖父から受け継ぎ競馬専門のブックメーカー業を営むネッド・タルボット。女王陛下が観戦する英国最大の競馬レース‘ロイヤル・アスコット’の初日、彼の前に父親と名乗る男が現れた。知られざるブックメーカー業界の錯綜する謎を描く。
矜持 CROSSTIRE (日本語訳 第44弾)
アフガニスタンで片足を失った英国陸軍大尉トマス・フォーサイス。帰宅休暇を命じられ調教師でもある母の元に戻るが母親は何者かに脅迫されていた。ディック・フランシス&フェリックス・フランシス共著の最後の作品。

上記コメンント(緑色)は季刊誌「馬銜」通巻85号(1998年12月25日発行 日本中央競馬会)より抜粋・引用